【賃上げブログ②|設計編】 - 賃上げ原資はどこから生み出す?中小企業のための「賃上げ設計テンプレート」
賃上げ原資は「頑張って稼いで後から生まれるもの」ではなく、設計で先に確保するものです。 本記事では、原資を生む3要素と、実務で使える逆算テンプレートを提示します。
前提(思想)
本記事は「賃上げはコストではなく、経営設計の起点である」という考え方を前提にしています。 まだ未読の方は、先にこちらをご覧ください。
賃上げ原資は「頑張って稼ぐ」ものではない
賃上げの議論で必ず出てくるのが「原資がない」という言葉です。 ただし、ここに誤解があります。 賃上げ原資は売上が伸びて“後から生まれるもの”ではなく、設計で“先に確保するもの”です。
原資はこの3つからしか生まれない
賃上げ原資の正体は、次の3点に集約されます。
- 生産性(人時売上・人時粗利の改善)
- 価格(付加価値の再定義と価格転嫁)
- 固定費構造(やらない仕事を決める)
「売上を増やす」は解決策というより結果にすぎません。 先に設計し、後から売上がついてくる状態を作ることが重要です。
賃上げ設計テンプレート(実務版)
ここからは実務で使える逆算テンプレートです。 Excelで管理する場合も、まずはこの順番で思考を固定するとブレません。
ステップ1:現状把握
- 人件費総額(役員報酬・賞与・法定福利費の扱いは社内定義を統一)
- 付加価値額(例:売上 − 外注費 − 材料費)
- 人時生産性(可能なら:付加価値額 ÷ 総労働時間)
ステップ2:目標設定
- 賃上げ率(例:+3%)または賃上げ額(例:月+1万円)
- 必要な人件費増加額(年換算)
ステップ3:必要付加価値の逆算
人件費増加額を、付加価値率や粗利率で割り戻します。 これにより「最低限、どれだけ付加価値を増やす必要があるか」が数字で出ます。
- (例)必要付加価値増分 = 人件費増加額 ÷ 付加価値率
ステップ4:手段の切り分け(やる順番を決める)
ここが最重要です。全部を同時にやると、全部が中途半端になります。 まず「削る」「移す」「上げる」「投資する」を切り分けます。
- 業務削減:やらない仕事を決める(低付加価値の棚卸し)
- 省力化・自動化投資:人がやらない仕組みに置換
- 価格転嫁・顧客選別:利益が残る顧客に集中
- 高付加価値業務への集中:勝てる領域にリソースを寄せる
次に必要なのは「判断軸」
テンプレがあっても、すべての企業が今すぐ賃上げすべきとは限りません。 次の記事では、賃上げを“やる・やらない”で迷ったときの経営判断の軸を整理します。
補助金・制度の正しい位置づけ
補助金や税制優遇は便利ですが、賃上げの“原資”ではありません。 位置づけはあくまで加速装置です。 設計がないまま制度を使うと「単年度は楽だが、翌年以降が苦しい」状態になりやすい。 先に設計、後から制度。この順番を崩さないことが重要です。
まとめ:賃上げは数字で語れるようになる
賃上げを「感情」ではなく「数字」で語れる状態にすると、意思決定が進みます。 なぜこの水準なのか、どこで原資を生むのか、どこまでが安全ラインか。 それが説明できた瞬間、賃上げは“怖いもの”ではなくなります。
よくある質問
- 付加価値額はどう定義すべきですか?
- まずは「売上 − 外注費 − 材料費」など、社内で一貫した定義を置くのがおすすめです。 定義を揃えることで、改善の比較が可能になります。
- 価格転嫁が難しい業種でもテンプレは使えますか?
- 使えます。その場合、価格転嫁の比率を下げ、業務削減・省力化投資・顧客選別の比重を上げて設計します。
- 全部同時にやる必要がありますか?
- いいえ。むしろ同時実行は失敗確率が上がります。 先に「やらない仕事」を決め、その後に投資・価格の順で進めるほうが再現性が高いです。


