小規模事業者持続化補助金の最新動向と、相談が噛み合わない理由― Web会議の前に必要な事前設計とは
なぜ、小規模事業者持続化補助金の相談は噛み合わなくなるのか
小規模事業者持続化補助金のニュースを追っているものの、
「結局、今は何を判断すればいいのか分からない」
と感じている方は少なくありません。
制度の概要や公募スケジュールは分かっても、
それを自社の投資判断にどう落とし込むかは、別の話だからです。
特に、
「まずは一度、Web会議で相談しよう」
という流れになったものの、
話が噛み合わず、結論が出ないまま終わってしまった――
そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
私たちコインバンク株式会社では、
小規模事業者持続化補助金をはじめとした補助金相談において、
“とりあえずWeb会議”を行うことはしていません。
それは、忙しいからでも、相談を断りたいからでもありません。
事業や投資の設計が整理されていない段階でのWeb会議は、
判断の精度を下げてしまうことを、現場で何度も見てきたからです。
本記事では、
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なぜ小規模事業者持続化補助金の相談が噛み合わなくなるのか
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Web会議が非効率になりやすい構造的な理由
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制度を単発で終わらせないための事前設計の考え方
を整理しながら、
「今、何を考えるべきか」を実務視点で解説します。
① よくある相談パターンの紹介(匿名・抽象化)
小規模事業者持続化補助金に関する相談には、大きく分けて二つのパターンがあります。
どちらが良い・悪いという話ではありません。
事業が今どのフェーズにあるかの違いです。
パターン①:初見相談(外部プラットフォーム経由に多いケース)
「とりあえず一度、相談できませんか?」
こうしたお問い合わせの多くは、
事業や投資の方向性をこれから探る探索フェーズにあります。
具体的には、
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自社の事業内容を、第三者に簡潔に説明できていない
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何に投資したいのか、仮説がまだ固まっていない
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補助金を使う前提かどうかも決まっていない
-
スケジュール感(いつ決めたいか)が整理されていない
といった状態です。
この段階でWeb会議を行うと、
話題は自然と
「この補助金で何ができますか?」
「Webに使えますか?」
といった制度の一般論に集中します。
しかし、これは本来、
Web会議の場で即断すべきテーマではありません。
必要なのは、
制度の説明ではなく、事業設計の整理です。
設計がないまま会話を始めてしまうと、
会議は“情報収集の場”になり、
結局「何を決める会議だったのか」が曖昧なまま終わってしまいます。
パターン②:既存顧客(または紹介経由)の相談
一方で、既存のクライアントや紹介経由の相談では、
最初から前提条件が共有されているケースが多くあります。
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すでに大型の投資補助金を活用した経験がある
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大幅な賃上げ計画を含めた経営設計を行っている
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投資の目的や優先順位が言語化されている
この状態では、
Web会議は非常に有効な手段になります。
なぜなら、
「何を決めるか」が明確だからです。
制度の概要説明に時間を使う必要はなく、
選択肢を比較し、
どの投資を、どの順番で進めるかを判断することに集中できます。
重要なのは「どちらか」ではなく「今どこか」
ここで強調しておきたいのは、
どちらのパターンが正解という話ではない、という点です。
問題になるのは、
探索フェーズのまま、意思決定の手段としてWeb会議を使ってしまうことです。
小規模事業者持続化補助金のように、
使い道や条件に幅がある制度ほど、
事前設計の有無が、相談の質を大きく左右します。
だからこそ私たちは、
「まずWeb会議をしましょう」ではなく、
「まず整理しましょう」という進め方を重視しています。
次につながる導線(自然な接続)
次章では、
なぜこうしたズレが起きやすいのか、
Web会議が非効率になる構造的な理由を整理します。
制度の問題ではなく、
相談の進め方の問題として捉えることで、
小規模事業者持続化補助金との付き合い方も、
より現実的なものになります。
② なぜWeb会議が非効率になるのか
Web会議そのものが悪いわけではありません。
問題になるのは、事業や投資の整理ができていない段階で、意思決定の手段として使われてしまうことです。
特に小規模事業者持続化補助金のように、
選択肢が多く、解釈の余地がある制度ほど、
このズレは顕著に表れます。
私たちが現場で感じている理由を、三つに整理します。
1.前提条件が共有されていない
Web会議が噛み合わなくなる最大の原因は、
前提条件が共有されないまま話が始まることです。
例えば、
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事業の成長フェーズ
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投資に使える予算感
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意思決定者が誰なのか
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補助金を前提に進めるのか、あくまで手段の一つなのか
こうした情報が整理されていない状態では、
どれだけ話しても、議論は抽象論に流れます。
小規模事業者持続化補助金の相談で多いのは、
制度の話から入ってしまうケースです。
しかし本来は、
「どんな事業を、どこまで伸ばしたいのか」
という前提が先にあり、
その手段として制度を検討すべきです。
前提が揃っていないWeb会議は、
結論を出す場ではなく、
情報を散らかす場になってしまいます。
2.判断軸が定義されていない
次に多いのが、
何を基準に判断するのかが決まっていない状態で会議を行うケースです。
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短期の売上を重視するのか
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中長期の付加価値向上を狙うのか
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人材確保や賃上げを優先するのか
判断軸が曖昧なままでは、
選択肢を比較することができません。
結果として、
「それも良さそうですね」
「一度検討します」
という結論になりがちです。
小規模事業者持続化補助金は、
使い方次第で成果が大きく変わる制度です。
だからこそ、
Web会議の中で判断軸を探し始めるのではなく、
事前に仮の判断軸を置いた上で話す必要があります。
3.本来は非同期で済む情報収集を、会議で行っている
三つ目は、
非同期で整理できる内容を、Web会議で処理しようとすることです。
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制度の概要説明
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過去事例の紹介
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補助対象経費の一般論
これらは、
文章や資料で十分に共有できる情報です。
にもかかわらず、
最初からWeb会議を行ってしまうと、
貴重な時間が「説明」に消えていきます。
Web会議の価値は、
情報を伝えることではなく、
判断を前に進めることにあります。
事前に情報を整理し、
共通認識を持った状態で臨むからこそ、
Web会議は意味を持ちます。
Web会議を否定しているわけではない
ここまで読むと、
Web会議に否定的に見えるかもしれません。
しかし、私たちは
Web会議そのものを避けているわけではありません。
むしろ、
設計が整った後のWeb会議は、非常に強力な手段だと考えています。
重要なのは、
「いつ」「何のために」Web会議を使うか、です。
次章では、
Web会議が有効になるケース/ならないケースを整理しながら、
相談の進め方をもう一段具体化していきます。
③ 私たちが重視している「事前設計の項目」
小規模事業者持続化補助金は、
販路開拓や広報活動を支援する制度として、非常に使い勝手の良い補助金です。
一方で、相談の現場では
「Webサイトを作りたい」「とりあえずデジタル化したい」
という目的だけが先行し、制度との相性が整理されないまま話が進むケースをよく見かけます。
まず押さえておきたいのは、
小規模事業者持続化補助金は“何でも使える補助金ではない”という点です。
一般的に、
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展示会出展費
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チラシ・パンフレット制作
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広告宣伝費
といった販促関連費用には強い一方で、
Webサイト関連費については、補助対象や金額に一定の制約があります。
そのため、
「Webサイトを作ること自体」が目的になっている場合、
制度と事業の設計が噛み合わなくなることがあります。
私たちが重視しているのは、
補助金を前提に事業を考えるのではなく、事業設計の中に補助金を位置づけることです。
例えば、
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将来の人材確保を見据えた賃上げ設計
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付加価値向上に向けた中長期の投資計画
を先に整理することで、
小規模事業者持続化補助金を単発で使うのではなく、
他の補助金制度との組み合わせが現実的になります。
結果として、
持続化補助金単体では難しかった投資規模でも、
200万円規模の投資が成立するケースは珍しくありません。
重要なのは、
「この補助金で何ができるか」ではなく、
「この事業設計の中で、持続化補助金をどう使うか」を考えることです。
この視点が整理されていない状態でWeb会議を行っても、
制度の説明に時間を使うだけで、
本来議論すべき投資判断には踏み込めません。
だからこそ、私たちは
Web会議の前に、必ず“事前設計”を行うことを重視しています。
④ Web会議が有効になるケース/ならないケース
ここまで見てきた通り、
Web会議が噛み合うかどうかは、話し方や相性の問題ではありません。
事前にどこまで設計されているかで、結果はほぼ決まります。
小規模事業者持続化補助金の相談に限らず、
投資や経営判断に関わる話ほど、この差は顕著です。
Web会議が有効になるケース
次のような条件が揃っている場合、
Web会議は非常に有効な手段になります。
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事業内容や現状が、第三者に説明できる形で整理されている
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投資の目的が明確で、優先順位がある
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おおよその予算感や投資規模が共有されている
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補助金は手段の一つであり、前提条件ではない
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意思決定者、または判断に影響する立場の人が参加している
この状態では、
Web会議は「説明の場」ではなく、
選択肢を比較し、決断するための場になります。
例えば、
小規模事業者持続化補助金を活用する場合でも、
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今回は販促を優先するのか
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それとも中長期投資の一部として位置づけるのか
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他の制度とどう組み合わせるのか
といった議論に、時間を使うことができます。
Web会議が有効になりにくいケース
一方で、次のような状態では、
Web会議を行っても成果は出にくくなります。
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事業の方向性や課題がまだ言語化されていない
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投資を検討している理由が曖昧
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予算やスケジュールが決まっていない
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補助金を使うこと自体が目的になっている
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情報収集が主目的で、判断する意志がまだ固まっていない
この段階でWeb会議を行うと、
どうしても話題は制度の一般論に寄り、
「まずは調べてみます」「検討します」という結論に落ち着きます。
これは時間の無駄というより、
順番が違っているだけです。
Web会議を“後ろ倒し”にするという選択
私たちが重視しているのは、
Web会議を減らすことではありません。
Web会議のタイミングを、あえて後ろにずらすことです。
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まずはテキストや資料で整理する
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仮の事業設計・投資設計を作る
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判断ポイントが見えてきた段階で、Web会議を行う
この順番にするだけで、
同じ30分のWeb会議でも、得られる成果は大きく変わります。
小規模事業者持続化補助金の相談でも、
「制度の説明」を会議で行う必要はほとんどありません。
決めるべきことが見えてから会う。
それが、Web会議を有効に使うための最短ルートです。
次につながる視点
次章では、
こうした考え方を踏まえた上で、
相談前に最低限整理しておいてほしい情報をチェックリスト形式で整理します。
補助金を使うかどうかに関わらず、
「一緒に仕事を進める価値があるか」を、
お互いに見極めるためのポイントです。
⑤ 相談前に用意してほしい最低限の情報(チェックリスト)
ここまで読んでいただいた方であれば、
私たちがWeb会議を避けたい理由は、
「忙しいから」でも「冷たいから」でもないことは、
ご理解いただけたと思います。
最後に、
相談の質を高めるために、最低限整理しておいてほしい情報を
チェックリスト形式でまとめます。
補助金を使うかどうかに関わらず、
一緒に検討する価値があるかどうかを、
お互いに判断するための材料です。
相談前チェックリスト
□ 現在の事業内容を、第三者に説明できるか
・何を提供している会社(事業)なのか
・誰に、どんな価値を届けているのか
※完璧でなくて構いません。A4一枚で説明できれば十分です。
□ なぜ今、投資を検討しているのか
・売上拡大のためか
・人材確保・定着のためか
・業務効率化や付加価値向上のためか
「補助金が出るから」以外の理由が言語化できているかが重要です。
□ 投資後、何が変わる想定か
・売上、利益、業務プロセス、人の動き
・定量・定性どちらでも構いません
投資の“出口イメージ”があるかどうかで、議論の深さが変わります。
□ 意思決定者は誰か
・最終的に判断するのは誰なのか
・Web会議に同席できるのか
ここが曖昧なままでは、話は前に進みません。
□ スケジュール感はあるか
・いつ頃までに方向性を決めたいのか
・補助金ありきなのか、タイミング優先なのか
「急いでいるかどうか」より、「考える時間をどう使うか」が重要です。
□ 補助金がなくても、この投資を進めたいか
この質問は、少し厳しく聞こえるかもしれません。
しかし、私たちにとっては非常に重要なポイントです。
補助金は、
事業を前に進めるための加速装置であって、
事業そのものを成立させるための条件ではありません。
補助金を「単発」で終わらせないために
通年でお付き合いしているクライアントの多くは、
最初から大きな投資をしていたわけではありません。
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クライアント自身も気づいていなかった必要経費
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小規模でも効果の高い投資
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サプライチェーン全体を見渡した際の改善ポイント
こうしたものを一つずつ整理し、
事業設計の延長線上で補助金を活用してきた結果です。
取引先の個人事業主に対する法人化(創業)相談や、
サプライチェーンマネジメントの観点からの支援も、
同じ考え方で進めています。
相談の進め方について
私たちは、
いきなりWeb会議から始めることはしていません。
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まずはテキストや資料で整理する
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必要に応じて、設計のたたき台を作る
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判断ポイントが明確になった段階でWeb会議を行う
この順番を取ることで、
限られた時間と資源を、
本当に価値のある判断に使うことができます。
小規模事業者持続化補助金を含め、
制度はあくまで手段です。
事業の完成度を高めるために、
どの制度を、どの順番で使うか。
その設計から、一緒に考えていきます。

