なぜ採択がゴールになると失敗するのか
― 補助金依存が生む経営の歪み ―
はじめに
「採択されました。」
この瞬間、経営者は安堵します。
努力が報われた感覚もあるでしょう。
しかし、ここをゴールにしてしまった瞬間、
経営はゆっくりと歪み始めます。
なぜ判断が歪むのかという構造については、
こちらで整理しています。
▶ 判断が歪む構造
本記事では、採択が“目的化”することで起きる3つの問題を整理します。
問題①|成果の錯覚が生まれる
採択=成功、という心理が働きます。
しかし実際には、
- 投資はこれから
- 回収もこれから
- 組織負荷もこれから
です。
それにもかかわらず、
経営会議や対外発信で「成果」として扱われる。
ここで“錯覚”が生まれます。
採択は通過点です。
成果ではありません。
問題②|判断基準が補助額中心になる
次に起こるのが、補助額中心思考です。
- 補助率が高いからやる
- 上限額が大きいから挑戦する
- 加点を取れるから応募する
これらは制度判断であって、経営判断ではありません。
本来の問いは、
- この投資は事業設計と整合しているか
- 将来設計と接続しているか
です。
制度を軸に置くと、
会社は常に外部要因で揺れます。
問題③|撤退判断ができなくなる
最も危険なのはここです。
採択された以上、やらなければならない。
途中で止められない。
修正しにくい。
心理的拘束が発生します。
しかし経営において重要なのは、
“撤退ラインを事前に設計しているか”です。
制度は変更できません。
しかし事業計画は修正できます。
それを忘れた瞬間、補助金は拘束装置になります。
採択は「契約」ではない
補助金は契約のように感じますが、
本質は「支援制度」です。
目的は、
- 生産性向上
- 付加価値向上
- 賃上げ
- 事業高度化
です。
採択されたからやるのではなく、
設計と一致しているからやる。
順番が逆転してはいけません。
では、どう扱うべきか
採択は次の問いに答えられるかどうかで判断します。
- 投資回収シナリオは3通り描いているか
- 人材負荷を数値で見ているか
- 撤退ラインを明示しているか
- 補助金がなくてもやる投資か
ここまで整理できていれば、
採択は加速装置になります。
整理できていなければ、
ブレーキになります。
まとめ
採択がゴールになると失敗する理由は単純です。
制度が主語になってしまうからです。
主語は常に、
会社の設計
でなければなりません。
制度は目的ではなく、
設計を加速させる手段です。
この順番を守れるかどうかが、
分岐点になります。


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