経営のデジタル化はITを活用したビジネスモデルの構築
目次
1.世界経済はビジネスのIT化で成長している
2.システム更新とクラウド導入
3.アジャイルというやり方
4.システム更新はいつか来た道~これからは外部協力の時代
5.まとめ
先日、Dell主催のカンファレンス(Dell Technologies Cloud Executive Summit 2019 ~『変革』の神髄~)に参加してきました。基本的には、Dellのクラウドサーバーを使ったシステム会社が、クラウド導入についてのプレゼンテーションをするカンファレンスです。弊社が参加した目的は、パネルディスカッションの"経産省「DXリポート」の読み方"を聴講することでした。
システム導入の苦労話や技術に詳しくなるのも大事ですが、そもそもシステムを入れる目的を間違ってしまっては意味がありません。
今回のパネルディスカッションでは「経営のデジタル化を何のためにするのか?」という点が良く議論されていて、良い知見を得られたのでお伝えしたいと思います。
1.世界経済はビジネスのIT化で成長している
経済産業省がDXリポートで意図したことは「最新の技術でビジネスの生産性(成長率)を上げていくこと」です。
実際、主要国ではIT投資により、米国が6%、中国では15%の経済成長を遂げています。これに対して日本はわずか1%しか成長していません。なぜなら日本のIT投資は、投資額の8,9割が既存システムの更新に偏っており、生産性の向上に寄与していないからです。
日本の経営者の多くは、デジタル化やIT投資を、ビジネスに直結しないシステム更新の経費ととらえがちです。しかし実際は、新しいサービスを次々に生み出すことでビジネスの発展(売上向上、新商品・サービスの開発)を加速することができます。むしろ、これを怠れば、日本の経済は世界に置いて行かれるでしょう。
これは決して伝統的なビジネスを止めるということではありません。たとえば、元々ビジネスではなかった芸術や伝統工芸を、IT技術を使ってアピールし、販路を開発することにより、新しく知った人が新しいとらえかたで価値を高め、経済的に成長させることも出来るということです。
2.システム更新とクラウド導入
経営者はシステムの更新時期になって、ようやくデジタル技術の動向に興味を持つ場合が多いようです。近年では、レガシーシステム(従来の自社にPCやサーバーを置いているシステム)の更新でクラウド導入を検討するようになっていますが、所詮システムの置き換えという認識が多いようです。
しかしシステム更新の際に、レガシーシステムをコストの観点だけでクラウドにしているようでは、ビジネスの価値を上げることはできません。このレガシーシステム更新の機会に、ビジネスの作り方から考えて新システム導入を進めることが重要になります。
その際に、AIやIoTなどの最新技術を使って自社のビジネスがどう変われるか?経営層とIT担当者だけでなく、全社で考える必要があるでしょう。
3.アジャイルというやり方
上記のように、システム更新の機会にビジネスを作り直すといっても難しいと思います。特に日本企業の従来のやり方だと、新商品やサービスをしっかり作り込んで完成度を上げてから上市します。
しかし、この方法だと、現代のITシステムを使った柔軟性の高い、スピード感のあるビジネス開発について行けなくなるのは明らかです。実際、先ほど紹介したように、日本のIT投資による成長率は米中よりはるかに劣っています。
ではどうすればいいでしょうか?
最新のビジネス開発は、アジャイル型という方法が主流になっています。これはITスタッフを社内に要し、ビジネス開発のスタート時点から関わらせることで、新商品の試作と市場テストを繰り返しながら新商品を作っていくやり方です。
このやり方の利点は、基本的なビジネスモデルを作り、試作品をリリースしたら、ユーザーの意見を入れながら改善していけるので、商品の外れが減り、無駄な投資も避けられることです。
企業によっては、ITスタッフを雇用するのは難しいかもしれませんが、簡単にできる第一歩として経営層がシステムを理解するということが重要になります。経営層の理解が進めば、自社の在り方に対して必要な人材や投資も、自ずと見えてくるでしょう。
4.システム更新はいつか来た道~これからは外部協力の時代
歴史ある企業なら、過去にメインフレームからオープンシステムへ移行したときの苦労も、ご存知だと思います。今起きている変化は、仕組みとしてはクラウド化とアジャイル化が主ですが、この流れにビジネスを最適化できない場合、せっかく競争力のある商品を持っていても、ビジネスを続けられなくなるかもしれません。
システム更新を期に、自社の発展を目指すなら、管理運営の自動化と外部サービス利用を進め、ビジネス価値の向上に対し、より多くの社内リソースを振り向けられるようにすることが重要です。
そして、ビジネス価値の向上に取り組む際は、新しいものを考えるより、既存の物を足し算、引き算する方が簡単です。他社との協力関係(アライアンス)を築き、お互いが利益を得られる形でのビジネス再構築を進められれば、世界で進む経営デジタル化の流れに乗って、大きな発展を遂げることもできるでしょう。
5.まとめ
パネルディスカッションの聴講により「経営のデジタル化は、ビジネス価値の向上を目的にする」という弊社の方針に、確信を持てました。今回は中規模以上の企業を対象にしたシステム投資の話が主流でした。しかし、経営のデジタル化は、個人事業主の経営にも必要なことです。
弊社のクライアントの中に、助成金獲得サポートをさせていただいた美容サロンのオーナーがいらっしゃいます。この時の申請内容は、経営デジタル化による売上向上をテーマにしました。
これからも、規模の大小にかかわらず、経営のデジタル化コンサルにより、経営者のビジョンに合ったビジネスの発展をお手伝いしていきたいと思います。