【2026年最新】中小企業の3大補助金をどう使い分けるか―持続化・省力化・新事業進出と雇用・賃上げ要件
2026年の主要補助金では、投資目的だけでなく、従業員数、給与支給実績、賃上げ計画が申請資格や審査に大きく関わっています。
小規模事業者持続化補助金は、従業員0名でも申請できる場合があります。一方、省力化投資補助金・一般型第9回では、給与算定対象となる従業員が0名の場合は申請できません。
さらに、省力化投資補助金では、将来の賃上げ目標に加えて、設備導入前の「足元の賃上げ」も審査されます。
補助金を選ぶ際には、何を購入するかだけでなく、現在の雇用状況、給与実績、投資の目的、採択後の事業実行体制を確認することが重要です。
1.2026年11月、3つの主要補助金が公募時期を迎える
2026年11月には、中小企業の販路開拓、生産性向上、新事業進出を支援する補助金の公募が相次ぎます。
| 補助金 | 公募状況 | 主な支援目的 |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金・第20回 | 11月5日受付開始、12月15日締切 | 販路開拓・売上拡大 |
| 省力化投資補助金・一般型第9回 | 11月4日公募開始予定 | 人手不足解消・生産性向上 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金・第2回 | 11月2日公募開始、12月25日締切 | 新事業進出・革新的な製品開発 |
※省力化投資補助金・一般型第9回の詳細な申請日程は、正式公表資料で確認する必要があります。
また、2026年には「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が設けられ、従来の新事業進出補助金やものづくり補助金とは異なる制度体系となっています。
新制度には、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠があります。
今回の新制度を、従来の新事業進出補助金やものづくり補助金と同一のものとして扱わないことが重要です。
2.3大補助金は何が違うのか
3つの補助金は、企業が解決しようとしている経営課題によって整理できます。
| 経営課題 | 選択候補となる補助金 |
|---|---|
| 既存の商品・サービスの販路を広げたい | 小規模事業者持続化補助金 |
| 人手不足を解消し、生産性を高めたい | 省力化投資補助金 |
| 新しい製品・サービスを開発したい | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
| 既存事業とは異なる市場に進出したい | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
| 海外市場への展開を進めたい | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠 |
ただし、実際の採択可否は、投資目的だけでなく、補助対象事業者、対象経費、従業員数、賃金要件、過去の補助金利用状況などにも左右されます。
例えば、同じ設備投資でも、人手不足解消が目的なのか、新製品開発が目的なのかによって、適切な補助金は異なります。
補助金の上限額が大きいという理由だけで申請先を決めるのは適切ではありません。
3.小規模事業者持続化補助金―従業員0名でも活用できる制度
小規模事業者持続化補助金は、経営計画に基づいて販路開拓等に取り組む小規模事業者を支援する制度です。
一般型・通常枠の基本補助上限額は50万円、補助率は原則2/3です。インボイス特例や賃金引上げ特例の適用により、補助上限額が引き上げられる場合があります。
対象となる小規模事業者は、業種別に従業員数の上限が定められています。
| 業種 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| 宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ここで重要なのは、原則として従業員が0名でも、ほかの要件を満たせば申請対象になり得ることです。
代表者1名の法人や、従業員を雇用していない個人事業主でも、販路開拓に取り組む場合には検討できます。
賃金引上げ特例では12か月分の賃金台帳が必要
第20回公募要領では、賃金引上げ特例の適用を希望する場合、採択後から交付決定までの間に、採択発表日の属する月を終点とした連続12か月分の賃金台帳などを提出することとされています。
さらに、実績報告時には、補助事業実施期限日を終点とした連続12か月分の賃金台帳と雇用条件を確認できる書類が必要です。
この規定は、賃金引上げ特例や賃上げ加点を利用する場合に適用されるものであり、通常枠のすべての申請者に12か月分の賃金台帳が一律に必要という意味ではありません。
また、地域別最低賃金引上げ加点では、該当する従業員について連続3か月分の賃金台帳などの提出が求められます。
賃上げ特例を利用する場合、採択された後も従業員の給与実績を継続して管理する必要があります。
どのような企業に向いているか
持続化補助金は、例えば次のような企業に向いています。
-
既存商品の販売先を増やしたい企業
-
新しい顧客層に向けた販促を計画している企業
-
展示会出展や広告宣伝に取り組む小規模事業者
-
販路開拓に必要な商品改良や設備導入を検討している企業
一方、大規模な設備投資や、設備購入そのものが目的となっている計画には適さない場合があります。
販路開拓によって、どの程度の売上増加や顧客獲得が見込めるのかを明確にすることが重要です。
4.省力化投資補助金―従業員数・給与実績・賃上げが申請判断の重要条件に
2026年11月4日、中小企業省力化投資補助金(一般型)第9回の公募要領が公開されました。
省力化投資補助金は、人手不足に直面する中小企業等が、IoT、AI、ロボットなどのデジタル技術を活用し、生産・業務プロセスの省力化を進めるための制度です。
一般型では、個々の事業者の業務や導入環境に合わせたオーダーメイド設備・システムなどを対象としています。
補助上限額と補助率
第9回の補助上限額は、従業員数によって異なります。
| 常勤従業員数 | 通常の補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は中小企業が原則1/2、小規模企業者・小規模事業者等が2/3です。最低賃金引き上げ特例の要件を満たす中小企業は、補助率が2/3になる場合があります。
なお、補助上限額が「5人以下」の区分から設けられていても、従業員0名の事業者が申請できるという意味ではありません。
従業員0名では申請できない―採用したばかりの企業にも注意
省力化投資補助金・一般型第9回では、従業員の雇用状況と給与支給実績が重要な申請条件になります。
公募要領では、応募申請時の直近決算年度から事業計画期間終了までの間に、1人当たり給与支給総額の算定対象となる従業員が0名となる場合、応募できないことが明記されています。
ここで注意したいのは、給与支給総額の計算対象となる従業員の定義です。
対象年度に全月分の給与等を受けた従業員が算定対象となり、中途採用や退職などで全月分の給与を受けていない従業員は、その年度の算定対象から除外されます。
したがって、申請時点で従業員を雇用していても、直近決算年度に給与算定対象者が存在しない場合、応募できない可能性があります。
また、代表取締役や専従者など、常勤従業員の定義に該当しない者は、常勤従業員数に含まれません。
役員のみで運営する法人や、採用直後の事業者は、申請前に雇用状況と給与支給実績を確認する必要があります。
労働生産性と賃上げの基本要件
第9回では、次の基本要件を満たす3〜5年間の事業計画が必要です。
-
労働生産性の年平均成長率を4.0%以上向上させること
-
1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること
-
事業場内最低賃金を、毎年、地域別最低賃金より30円以上高い水準とすること
さらに、従業員21名以上の場合は、交付申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく有効な一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表する必要があります。
なお、最低賃金引き上げ特例の適用事業者には、事業場内最低賃金の基本要件について例外があります。
将来だけでなく「足元の賃上げ」も審査される
第9回の特徴として重要なのが、補助事業終了後の賃上げ目標だけでなく、設備導入前の「足元の賃上げ」も審査で評価されることです。
公募要領では、応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額について、年平均成長率が物価上昇率を上回る程度の賃上げを達成できない計画は、審査上大幅に不利になるとされています。
つまり、将来の賃上げ目標を設定するだけでなく、設備導入までの期間にも賃上げを進める計画が重要になります。
足元の賃上げ計画については、採択後から交付決定までの間に従業員への表明が必要であり、補助事業期間中の賃上げ実績もモニタリング対象となります。
大幅賃上げ特例と最低賃金引き上げ特例
通常の補助上限額を引き上げる大幅賃上げ特例では、基本要件に加えて、次の水準が求められます。
-
1人当たり給与支給総額の年平均成長率6.0%以上
-
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より50円以上高い水準とすること
一方、最低賃金引き上げ特例による補助率引き上げでは、2025年10月から2026年9月までの間に、所定の賃金範囲で雇用される従業員が全従業員の30%以上となる月が3か月以上あることなどが要件となります。
これらの特例は、通常の基本要件とは別に確認する必要があります。
賃上げ目標を達成できなかった場合の返還リスク
省力化投資補助金は、採択・入金によってすべての義務が終了するわけではありません。
1人当たり給与支給総額の増加目標を達成できなかった場合は、原則として達成率に応じた補助金返還が求められます。
また、事業場内最低賃金の要件を満たさなかった場合も、規定に基づいて返還が発生する可能性があります。
ただし、一定の赤字状況や天災など、事業者の責めに帰さない理由がある場合には返還が免除される規定もあります。
このため、補助金の申請時に設定する賃上げ目標は、単に採択を得るための数値ではなく、今後の収益計画や人件費負担と整合する必要があります。
採択後は14か月以内に事業を完了する
第9回では、補助事業実施期間が交付決定日から14か月以内、かつ採択発表日から16か月以内とされています。
また、交付申請は原則として採択発表日から2か月以内に行う必要があります。
補助事業実施期間内に、発注・契約、納品、検収、支払い、実績報告書の提出まで完了させなければなりません。
特に、特注設備やシステム開発など、納期が長い設備投資を計画する場合には注意が必要です。
交付決定前の発注・契約などの事前着手は認められていません。
また、交付申請時には、発注先1者当たり税抜50万円以上の見積額について、原則として同一条件での相見積もりが必要になります。
採択後に見積書や仕様書を準備し始めるのでは、事業実施期間を十分に確保できない可能性があります。
省力化投資は「人を減らすこと」が目的ではない
省力化投資補助金で重要なのは、単に作業時間を減らすことではありません。
例えば、設備導入によって年間1,000時間の作業時間を削減できたとしても、その時間をどのように活用するかによって、投資の成果は異なります。
削減された労働時間を、生産量の増加、品質向上、新たな付加価値業務などに振り向け、企業全体の収益力を高めることが重要です。
第9回の審査でも、部分的な省力化だけでなく、会社全体の成果や、賃上げへの接続が評価されています。
省力化投資補助金は、人件費の削減そのものを目的とする制度ではなく、限られた人員で高い付加価値を生み、その成果を賃上げにつなげるための投資支援制度です。
制度を利用する際には、設備の省力化効果とともに、企業全体の収益性、賃金計画、資金繰り、事業実施体制を確認することが重要になります。
5.新事業進出・ものづくり商業サービス補助金―新市場への投資と賃上げを結びつける制度
2026年に設けられた「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、革新的な新製品・新サービス開発、新市場への進出、海外展開などの取組を支援する制度です。
従来の補助金と比べる際には、枠ごとの支援目的を区別する必要があります。
3つの枠の違い
| 枠 | 主な事業目的 |
|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な製品・サービスの開発 |
| 新事業進出枠 | 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 |
革新的新製品・サービス枠では、単に既存の生産工程を改善するための設備購入は対象となりません。
新事業進出枠では、既存事業とは異なる製品・サービスと市場への進出が重要です。
つまり、設備投資額の大きさだけでなく、事業そのものの新規性や市場性が問われます。
従業員と給与支給総額の確認が重要
本制度の事業計画では、付加価値額、1人当たり給与支給総額、事業場内最低賃金について目標が設定されています。
公式の制度説明では、主に次の基準が示されています。
-
付加価値額の年平均成長率4%以上
-
1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上
-
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準とすること
これらの要件が未達となった場合には、規定に応じて補助金返還が生じる可能性があります。
また、従業員数によって補助上限額が変わる制度設計になっており、役員だけの法人では通常の従業員として役員を算入できません。
従業員の雇用状況、給与支給実績、今後の採用・賃上げ計画を、申請前に確認することが必要です。
新事業の投資計画には実行体制が必要
新事業進出に際しては、設備導入と同時に、販売先の開拓、人材確保、システム運用、資金繰りなどの課題が発生します。
仮に補助金が採択されても、設備の導入や事業開始までに必要な資金が確保できなければ、計画は実現できません。
また、補助事業終了後の売上や利益が計画を下回る可能性もあります。
そのため、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、補助率や補助上限額の確認に加え、新事業を継続できる経営体制を構築できるかという判断が重要になります。
6.なぜ2026年の補助金では雇用・賃上げが重視されるのか
3つの制度を比較すると、政府の中小企業政策に共通する方向性が見えてきます。
それは、補助金を単なる事業費支援として扱うのではなく、企業の生産性向上、付加価値の増加、従業員への賃金分配と結びつけていることです。
特に大型の設備投資や新事業を支援する制度では、申請時点の雇用・給与実績と、事業計画期間中の賃上げ目標が重要になります。
ここには、2つの政策的な意味があります。
① 補助金が企業の成長投資と連動している
企業が補助金を利用して設備投資や新事業に取り組み、生産性と収益力を高め、その成果を賃上げにつなげることが期待されています。
補助金の獲得額だけではなく、企業が投資によって生み出す付加価値が重要になります。
② 企業規模だけでなく、雇用・給与の管理体制も問われている
従業員を雇用していても、労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書、給与支給実績などが整理されていなければ、申請や採択後の手続きで問題が生じる可能性があります。
特に複数年にわたる賃上げ要件のある補助金では、採択後も給与や従業員数の変化を継続的に把握する必要があります。
したがって、2026年の補助金活用では、事業計画と人事・労務・財務の管理を切り離さないことが重要です。
|
比較項目 |
持続化 |
省力化一般型第9回 |
新事業進出・ものづくり |
|---|---|---|---|
|
従業員0名 |
原則申請可能 |
申請不可 |
申請不可 |
|
給与実績 |
賃上げ特例等で確認 |
算定対象者が必要 |
賃上げ計画と給与実績を確認 |
|
賃金台帳 |
特例等に応じて提出 |
効果報告等で提出要求 |
要領・枠ごとに確認 |
|
賃上げ |
特例・加点等に関係 |
基本要件・審査対象 |
基本要件・審査対象 |
|
採択後の義務 |
交付・実績報告 |
実績報告・毎年の効果報告 |
実績報告・事業化状況報告等 |
7.補助金は企業の経営状態から選ぶ
コインバンクでは、補助金の選択を制度名から始めるのではなく、企業の経営状態から考えることが重要だと捉えています。
例えば、売上を増やしたい企業と、人手不足を解消したい企業、新規市場への参入を計画している企業では、必要な投資が異なります。
また、従業員0名の企業と、従業員20名を雇用する企業では、賃金要件の達成可能性や組織体制も異なります。
申請前には、少なくとも次の事項を確認する必要があります。
-
現在の従業員数と給与支給実績
-
投資の目的と期待する効果
-
投資額と自己資金・借入金の調達可能性
-
今後の採用・賃上げ計画
-
補助事業実施期間中の担当体制
-
採択後の交付申請、実績報告、事業化状況報告への対応
これらの確認を行うことで、補助金が事業成長を後押しするのか、それとも企業に過大な投資負担を生むのかを判断できます。
補助金を使えることと、補助金を使うべきことは同じではありません。
補助金がなければ成立しない投資や、賃上げ要件を達成する見込みが乏しい事業については、申請を見送ることも合理的な経営判断です。
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8.採択後の管理まで含めて投資を設計する
補助金の申請は、事業投資の出発点にすぎません。
採択後には、交付申請、契約・発注、設備導入、支払い、実績報告などの手続きが必要になります。
さらに、制度によっては補助事業終了後も複数年にわたり、事業化状況や賃金要件の達成状況を報告しなければなりません。
事業計画に記載した賃上げ目標を達成できない場合や、取得した設備を認められた目的以外に使用した場合などには、補助金の減額・返還が問題になることもあります。
そのため、申請段階から、採択後の証憑管理、労務管理、事業進捗管理を含めて設計することが重要です。
コインバンクでは、補助金申請だけでなく、採択後の交付申請・実績報告・事業化状況管理を含む支援を行っています。
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まとめ|補助金は「経営状態」から選ぶ
2026年の主要補助金は、販路開拓、省力化、新事業進出という異なる経営課題を支援しています。
一方で、特に大型の設備投資・新事業支援では、従業員数、給与支給実績、賃上げ計画、採択後の実行体制が重要な判断条件となっています。
省力化投資補助金・一般型第9回では、給与算定対象者が0名の場合は申請できず、足元の賃上げも審査で評価されます。
また、採択後には設備導入や実績報告に加え、賃金目標の達成状況などを継続的に管理する必要があります。
したがって、補助金を選ぶ際は、制度の補助上限額や補助率だけを比較するのでは不十分です。
自社の経営状態を確認し、必要な投資を決め、その投資に適した補助金を選ぶ。
これが、コインバンクの考える補助金活用の基本です。
参考資料・公式情報
※本記事は2026年11月3日時点の公開情報を基に作成しています。申請にあたっては、対象となる公募回の最新公募要領、交付規程、FAQ等をご確認ください。

