金融機関との付き合いを意識した経営1:付き合う金融機関(銀行、信金(信組))の決め方
補助金申請をお手伝いする中で、最初の経費資金をどうするか?という問題が上がります。
令和3年度から始まった事業再構築補助金では、最も小さい規模の枠でも申請経費735万円で500万円の補助金をいただけるケースもあるため、経営を揺るがしかねない問題です。
この資金問題に対して、経営者として王道といえる対応方法は、金融機関からの借り入れと言えるでしょう。しかし、金融機関側の会社の見方を全く知らないと文字通り門前払いも珍しくありません。普段の経営で行っているお金の管理を、いざという時の借り入れにつなげられるようにする経営の考え方について概観します。
・目的をもって金融機関を選びましょう
メインバンクという考え方はあまりしなくましたが、民間銀行は自行の利益もあるので、当時の考え方からあまり変わっていません。ネットバンクなど便利さだけなら選択肢が大きく広がっていますが、経営の資金繰りを考えるとつきあう金融機関をしっかり選ぶ必要があります。
まず創業間もない場合、事業に対する経営者の経験と資金量で付き合う金融機関が決まってきます。大きな銀行に知り合いがいる場合、口座くらいは開かせてくれることもありますが、その後はなしのつぶてでしょう。銀行も収益を上げるために営業していますので、仕方ないことです。銀行の規模については後述します。
個人事業主や法人成りしたばかりの場合で、年商3億円以下なら日本政策公庫(公庫)を訪ねることをお勧めします。公庫は国の金融機関なので民間銀行が対応しないハイリスクな融資も行っています。
特に創業融資は2期目まで申請できますので、まずこれを通しましょう。公庫の借り入れが適切な額であり、返済も順調に行っていれば、民間金融機関も「この経営者なら話を聞いてみよう」と思うはずです。
一方、最初から民間銀行に行くなら、信用金庫または信用組合(信金・信組)がおすすめです。実は銀行と信金・信組は全く異なる金融機関です。そして信金・信組は営業エリアが決まっている代わりに、エリア内の事業者であれば手厚く対応してくれます。
年商が1億円以下の場合でも、地方銀行などは対応してくれます。しかし必要な融資額と普段・緊急時の対応を考えると、公庫に加えて信金・信組から1つ、合計2つの金融機関と丁寧に付き合うことがストレスなく必要な資金を得られる有効な方法だと思います。
・金融機関の規模と付き合い方
自社の年商3億円までは、融資を期待して付き合う金融機関の優先順位は以下でよいと思います。
信金・信組>地方銀行>=ネット銀行>メガバンク
自社の年商に対し、融資対応してくれる(担当がつく)銀行のざっくりとした規模感は以下の通りです。
メガバンク 年商10億円以上
地方銀行 年商5000万円以上
信金・信組 個人事業主から5000万円
日本政策金融公庫 創業から年商3億円(国民生活事業は1億円以下)
店舗経営で地域密着型にし、広域の複数店舗展開を考えていないなら、地元の信金・信組の口座は確実に開いておきましょう。個人経営も丁寧に付き合ってくれます。また、最近は電子マネー決済が増えてきているので、ネット銀行の口座を開いておくのも有効です。
地方銀行は、銀行の方針や担当者にもよりますが、個人経営レベル(従業員5人以下、年商5000万円以下)は、正直なところ商売にならないのであまりやりたがりません。
自分の事業に合わせてストレスなくお金を動かすには、信金・信組とネット銀行をうまく使い分けることがおすすめです。
・銀行が貸し出す基準は現預金残高!?
事業を進めるにあたり、設備投資や運転資金を借り入れることはとても重要です。特に物販などは仕入れから売り上げの入金までタイムラグ(資金サイト)が大きく、利益率も高くないことが多いので、売り上げ規模を十分なレベルに上げていくには借入資金をうまく使う必要があります。
その際、銀行がお金を貸し出す基準がいくつかあるのですが、間違いない基準は自社の現金・預金の残高です。特に、借り入れをしたい銀行の口座残高は重要になります。
もちろん、現金をよそからの借り入れで賄うと融資可能額が削られてしまうので問題ですが、それをうまく回避する方法があります。それは公庫からの借り入れです。公庫に融資してもらえるくらいの経営計画を作れること、口座に残高があること、この2点が民間金融機関から融資を受ける点で重要になります。
むしろ、経営に信用を得るという意味では、年商3億円くらいまであえて公庫の融資残高をバランスシートに残しておきましょう。金利も低いので、返済と借換を繰り返すことで残高を適切に維持します。公庫側は国の金融機関なので、民間金融機関と違い単年度で多少赤字が出ても、返済実績があると借り換えに応じてくれやすくなります。
なんだかんだ言っても現金が重要ということ、そして現金を信用にして現金を呼ぶことを肝に銘じておきましょう。
・まとめ:金融機関とうまく付き合い補助金で事業を加速する
経営には資金が必要です。その資金効率を高めてくれる融資は、適切に使えば事業の成長を加速してくれます。融資残高をコントロールし、補助金も使えば自己資金の何倍もの事業を展開することもできます。ぜひ、頭の片隅に入れておいてください。
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